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Project B/3月 vol.4「B食を生み出した男」
Photograph: Akihiko Sonoda  
「KW乳酸菌」誕生秘話 体質改善できる乳酸菌をさがせ!/Guest:西田聡さん(小岩井乳業株式会社)
食品をおいしくするだけではない乳酸菌
「 おーい元気かい? と、ときどき声をかけてあげるのが仕事です」
と話す西田聡さん。ヨーグルトの商品開発に携わっている彼が、会社で声をかけている相手は、生きている乳酸菌である。自社で保有する130種ほどの乳酸菌を管理しているという。
「新しいヨーグルトの企画がくると、どの乳酸菌を使ったらいいのかを調べて、菌を食べられる形に仕上げて戻すのが私の仕事です。今は10人(10種類の乳酸菌)の面倒を見ており、日々、友達と戯れています」
とうれしそうに笑う。
さまざまに商品化されて、とても身近に感じる乳酸菌だが、その存在は人類誕生よりもはるか昔にさかのぼる。
「乳酸菌は、ブドウ糖や砂糖といった糖類のあるところに生息する細菌で、おそらく何億年も前から地球上に存在していたはずの大先輩なんです。彼らは糖を食べて乳酸を出します。牛乳に入れば、牛乳の糖(乳糖)をエネルギーにして分解し、残りかすを“乳酸”という形で放出するのです。乳酸は酸性なんですね。牛乳に酢を垂らすと固まるのと同じように、牛乳を乳酸発酵するとドロドロに変化します」
これが、ヨーグルトができる仕組みだ。
ヨーグルト以外にも、チーズ、バター(乳酸発酵バター)、漬物、しょうゆ、みそなど、私たちが毎日口にしている食品には、乳酸発酵したものがたくさんある。乳酸菌が発見されたのは1800年代中頃だが、人類は太古の昔から使いこなしていたのだ。 →
KW乳酸菌ヨーグルト
KW乳酸菌を使った第1号商品「小岩井 KW乳酸菌ヨーグルト」(110g/小岩井乳業)
KW乳酸菌ヨーグルト
乳酸菌は、「属」「種」「株」と細分化される。属は、菌の形や生理的特徴で分けた大分類、動物でいうと「ヒト」は「ホモサピエンス」だということに相当する。種は人間でいう人種に相当する。株は個人に相当し、DNA(遺伝子配列)が一緒であれば同じ菌株と特定されている。
「KW乳酸菌は属がラクトバチルス、種はパラカゼイ、株がKW3110です。株の名前は私たちで勝手に付けたものです。彼らが自分たちで何と呼んでいるのかは知りませんが(笑)、小岩井乳業の保有株だったのでKWとしました。そして藤原研究員の実験で、アレルギー体質の根本であるリンパ球のレベルにおいて、KW乳酸菌が有効であることが確認されました。抗アレルギー活性で有名な他の菌株よりも、実験結果はよかったんです!」
“抗アレルギー活性のある乳酸菌”を発見しただけでは、事業には結びつかない。この乳酸菌が作り出す食品は、食べられるのか、味はおいしいのか、培養スピードはどのくらいなのか。
「食品にするための実験を担当したのが私です。乳酸菌の味にはクセのあるものもありますが、KW乳酸菌はごく自然な酸味でした。培養速度も極端に遅ければ工業レベルに乗れませんが、こちらもクリアーすることがわかりました」
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アレルギー症状が出るのは、リンパ球のなかにある“ヘルパーT細胞”のバランスがくずれることが原因だという。Th1とTh2という2つのヘルパーT細胞のうち、Th2がTh1より多くなることが原因だ。KW乳酸菌には、この2つの細胞のバランスを保つ作用があるのだそうだ。
「KW乳酸菌が消化管を通ると、腸の内面壁がキャッチして、“KW乳酸菌が来たぞ!”と信号をだすんですね。そこから脾(ひ)臓に信号が伝わって、リンパ球が“Th1がんばれ!”とハッパをかけてくれるんです。それでヘルパーT細胞のバランスが戻り、体は健康な状態になるんです」
シソ、トマト、甜茶などもアレルギー症状に効果がある食品として知られるが、これらは末端でしか効かない。鼻や目などの粘膜でTh2から出た炎症物質が働かなくするだけで、炎症を起こす物質は出続ける。そしてこれらの食品成分がなくなると、また炎症が起こってしまう。一方、KW乳酸菌は、そのもっと手前の部分で働く。炎症を起こす物質を身体が作らないようにするのだ。
「KW乳酸菌がアレルギーを抑えるメカニズムは、まだ十分に解明されていません。しかし、免疫臓器としての腸が、アレルギーに深くかかわっているのは確かなようです」
と西田さんは話す。腸の中の状態、つまり腸内細菌の状態を良くしておくことが大切なのだという。
「最近、プロバイオティクスという言葉を耳にします。“プロ”(共に)と“バイオ”(生きる)を組み合わせた共生という意味です。口から摂った菌が生きたまま腸に届き、腸内の善玉菌を増やして悪玉菌を抑えることによって、生体に良い影響を与えるものと理解されています」→

のむヨーグルト
今年から試験的に1都6県のコンビエンスストアで販売されている「小岩井 KW乳酸菌のむヨーグルト」(180ml/小岩井乳業)
「おなかの調子が悪いなと思ったら、ヨーグルトなどを食べてください。KW乳酸菌ヨーグルト1個にはKW乳酸菌が50億個以上含まれています。乳酸菌不足かどうかは、便で確かめられます。バナナシェイプの黄色い便なら大丈夫です!」
70年、80年前から、ヤクルトなどの企業が乳酸菌の研究をしてきた日本は、乳酸菌のパイオニア国だった。「腸内細菌学者の方々が基礎を作っていたからこそ、KW乳酸菌の着想もあり得た」と話す西田さん。近年ではプロバイオティクスの研究によって、日本はヨーロッパ諸国に追い上げられている。しかし西田さんは、「これからまた日本が巻き返す!」と力を込めて話す。KW乳酸菌の発見と製品化に携わった彼は、最後にこういった。
「私はこのまま、乳酸菌で人生が終わりそうですね。それほど乳酸菌の世界は奥が深くておもしろいのです」
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コラム
西田 聡
西田 聡にしだ・さとし
小岩井乳業(株)開発センター・開発担当課長代理
乳酸菌の仕事に携わるようになったのは10年まえ。菌付き合いは長く、それ以前は病原性大腸菌やサルモネラ菌などにも携わっていた。アレルギーになったことは一度もない。37歳。
http://www.koiwaimilk.com/
乳酸菌の発見
乳酸菌は、17世紀後半ごろにオランダのレーウェンフックという人物によって観察されている。しかし、本格的に解明したのはフランスの科学者、パスツールだった。19世紀後半、牛乳が腐るのは空気中に微生物がいるためだと唱えて、発酵や腐敗の謎を解いた。(写真はKW乳酸菌)
リンパ球
「白血球の仲間です。すい臓の裏にある小さな臓器、脾(ひ)臓がリンパ球の主な生産工場です。リンパ球は分化するとウィルスや細菌などの体に侵入してきた外敵に対するいろいろな防衛能力を備えていきます。ミサイルのように飛んでいく抗体を作ったり、丸のみにして破壊してしまう能力です。このような力を免疫力といいます」(西田さん)
タブレットやお茶にも使える
毎日摂取するのに簡単なほうがうれしい、という消費者の声に答えて、今年からはタブレット商品やお茶も販売された。西田さんは今後、毎回食卓に登場する商品にKW乳酸菌を取り入れたいと話す。
善玉菌
腸内には、数百種類の腸内菌が住んでいる。その数は人の細胞の60兆個を上回る100兆個だ。老化を促進したり病気の引き金となる有害菌(悪玉菌)を、老化防止や健康維持の作用を持つ有用菌(善玉菌)が抑えつけているので、私たちは健康でいられる。悪玉菌が増えると腸内腐敗が進み、がんをはじめとする病気を起こしかねない。
ビフィズス菌
赤ちゃんは無菌状態で生まれてくる。しかし、空気中のばい菌を摂取して、24時間でお腹の中は大腸菌でいっぱいになってしまう。ところがその3〜4日後には、今度はビフィズス菌が逆転するという。
「乳酸菌の中でも空気を嫌って、空気に触れると死んでしまうビフィズス菌がどこからやってくるのかは解明されていません。そこから半年間、母乳だけで成長する乳児の消化管内では、ビフィズス菌が大活躍します。ドラマですね。ビフィズス菌は、パスカルの時代に発見された善玉菌の代表格です」(西田さん)
 

西田さんのB食店
創造の森農園レストラン
西田さんは、栃木県・那須から横浜まで通勤しています。おススメのB食店は、地元のレストランです。
「地産地消の昔風の食生活が楽しめる店です。自家製野菜のシチューや、手作りのパンがおススメです。どちらも繊維がたっぷりで乳酸菌が喜びます」
創造の森レストラン
TEL:0287‐68‐0210
栃木県黒磯市高林369
http://www.pclifes.com/~souzou/restaurant.htm
芦野温泉
「ホテルも付いていますが、日帰りで入れる温泉です。食堂があって、ここのけんちんうどんは最高ですね」
芦野温泉
TEL:0287‐74−0211
栃木県那須町芦野1461
http://www.asinoonsen.co.jp/onsen/index.html

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裏話は編集ぶろぐへ

西田聡
「ヨーグルトやチーズの起源を紐解けば、そこには研究の要素はまずないんですね。5000年ほど前のある日、ミルクを搾りすぎたので容器に入れておいたところ、翌日には固まっていた。そんな感じだったと思うんです。偶然、家畜の乳房や人の皮膚、乳を入れる容器にいた乳酸菌が乳に混入し、そしてたまたま放置されて出来たと考えられます。昔は冷蔵庫や滅菌器具などなかったですから」
西田さんは、現在ある乳酸菌と乳の組み合わせは、かなり相性がいいという。
「乳は哺乳類が誕生した6000万年ぐらい前から存在します。想像するに、その時から乳酸菌たちによる乳の争奪戦が始まった。オレが!オレが! と競争するうちに、乳を利用する能力の高いが残ったんです。そんなドラマが展開されたのではないかと、私は思います」
糖を分解して乳酸をだす細菌は、すべて乳酸菌と呼ばれる。その種類は6000以上あるといわれている。
乳酸菌が、乳酸発酵をすることにより食品の保存力を高め、風味を良くすることは経験を通して昔から知られてきた。そして近年になって、腸内環境の改善、便通の改善、有害菌からの感染予防、アレルギー改善など、健康にも作用することが研究により明確になった。乳酸菌を利用すれば、人間はもっと具体的に健康になれる——そんな背景のもとに発見されたのがKW乳酸菌なのだ。
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2004年1月に発売された「KW乳酸菌ヨーグルト」には、ラクトバチルス・パラカゼイKW3110株という新しい乳酸菌が使われている。花粉症やアトピーといったアレルギー症状に悩む人の体質改善に効果があると、人気を呼んでいる商品だ。
「ラクトバチルス・パラカゼイKW3110株、通称KW乳酸菌の発見と製品化には、キリンビール、キリンウェルフーズ、キリンビバレッジ、小岩井乳業が共同で取り組みました。基礎研究、利用研究、商品化と、各自がそれぞれの持ち場で仕事をしました」
菌を発見したのは、キリンビール/基盤技術研究所の藤原大介研究員だった。彼のもとに、多くの乳酸菌が集められたという。
「2001年ごろ、アレルギー患者が非常に増えてきたのに有効な薬がない、という話題になったんです。たとえば、アトピーはステロイド剤で炎症を抑えることができますが、発症そのものは抑えられない。その場限りの対症療法で、しかも副作用があるため子供の将来にも恐ろしい。何とかならないか、ということになった。そこで“乳酸菌とアレルギー”という研究が始まったのです」
試験管レベルで評価するために、あちらこちらから100種類以上の乳酸菌が集められた。
「その中で一番優れていたのが、ラクトバチルス・パラカゼイ乳酸菌の小岩井乳業保有株だったんです」 ←
図1
図2
プロバイオティクスの反対語はアンチバイオティクス、つまり抗生物質だ。
「抗生物質は悪玉菌も殺せるけど、善玉菌も死んでしまう。健康な人がそこまでしなくても良い場合も多い。そこで、よりマイルドな方法としてプロバイオティクスが広まってきているのです。悪玉菌を殺してしまうのではなく、少しおとなしくしてもらうための方法です。プロバイオティクスは食品として摂取できるため、薬に比べて安価で手軽、しかも副作用の心配がありません」
さらにKW乳酸菌は、生菌はもちろんのこと、死んでいても抗アレルギー効果があることがわかった。プロバイオティクスが生菌に限定されるのに対して、死菌でも効果があることを「バイオジェニックス」と呼ぶ。バイオジェニックスでもあるKW乳酸菌は、生菌では利用できないタブレットやお茶にも使うことができる
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規則正しい食事で菌の住みやすい腸を!
「赤ちゃんからお年寄りまで、さまざまな形態の食品を通して,毎日KW乳酸菌を摂取していただくことができます。ほかの乳酸菌と同じように、過剰摂取による悪影響はありません。ただし体質を徐々に変えていくもので即効性はないので、花粉症対策として服用したいなら、花粉症シーズンが訪れる前からKW乳酸菌ヨーグルトなどを食べることをおすすめします。続けることは大変なのですが、体質から良くなるとすばらしいと思います」
昨年発売されたヨーグルトには、花粉症の症状が良くなったという消費者の声が寄せられた。食べる目安は、ヨーグルトなら1日1個。そして毎日摂ることが重要だという。
「 腸で起こることですから、やはり毎日の食事が大切なんですよ。菌が定着できるかできないかは、毎日の食べ物によって本当に変わります。食物繊維の多い普通の食事をしていれば、善玉菌である乳酸菌をキープすることはできます。しかし、朝ごはん抜き、昼にスナック菓子、夜は栄養ドリンクといった食生活をした場合、あっというまに乳酸菌はいなくなってしまうんです。ビフィズス菌を例にとると、健康な人間の便1gで10億から100億個見つかりますが、少ない場合ですと100個という人もいます」
乳酸菌が住みやすい環境を作るには、「米や小麦を主食とし、主菜に豆、肉や魚、副菜に野菜、芋、豆を取ること」だそうだ。食物繊維、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン類、ミネラルをバランスよくとることが大切なのだと西田さんは強く語る。←
キリン やわらか
キリン 体質茶 キリン ノアレ
KW乳酸菌を使って乳酸発酵させたビール「キリン やわらか」
(350ml/キリン)
KW乳酸菌を緑茶に取り入れた「キリン 体質茶」
(350ml/キリンビバレッジ)
KW乳酸菌(死菌)をタブレットにした「キリン ノアレ」
(30カプセル/キリンウェルフーズ)。

西田さんおススメ
西田さんおススメの、乳酸発酵食品界のB食だ。
1. 小岩井純良バター
「これは普通のバターよりも、頭1つ抜けておいしいと私は思います。バターのB食です」
小岩井純良バター
2. 小岩井プレーンヨーグルト グルメファン
「私にとって日本一のヨーグルト。コクがあって、素晴らしい!としかいいようがないです」
グルメファン
3. 小岩井生乳100%ヨーグルト
「生乳だけで作った最もシンプルなヨーグルトです。しかしその裏には、発酵時間が長くかかるために、他の菌をシャットアウトするための高度な技術が要求されています」
\

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