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B食倶楽部 食べてきました!今週のピックアップB食店/vol.27
もと寿司職人が目利きした岩ガキ「ハル(東京・中目黒)」
カウンターは7席ほど。壁の向こうのテーブル席はアンティーク家具でまとめられている。
京・中目黒の「ハル」は、肴の旨い居酒屋だ。中目黒駅の東側、東急東横線の線路に並行するように延びる「目黒銀座商店街」を進むとある。ポッと灯った店先のちょうちんが、訪れる者をあたたかく迎えている。のれんをくぐり中へ入ると、入り口付近はこぢんまりとしていて、カウンター席のお客さんにぶつかりそうになる。しかし奥行きがあり、壁の向こうに20席ほどのテーブル席も用意されているので、グループでも大丈夫だ。落ち着けるテーブルもおすすめだが、カウンターに陣取れば、ご主人、通称「ハルさん」の仕事ぶりがよく見える。
旬の魚が並ぶネタケース。
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年間寿司職人として活躍した彼は、自分のやりたいのは居酒屋だと気づき、6年前にハルをオープンさせたのだそう。「食いしん坊の呑んべぇなんですよ、私…」とハルさんは笑う。カウンターには寿司屋のようにネタケースが設けられ、並べられた魚はイキの良さを競い合うように光っている。すべてハルさん自らが築地に通い、寿司屋仕込みの鋭い目利きで選んだものだ。できるだけ良いものを安く手に入れるという。それが手ごろな価格の料理となって提供されるので、我々の懐にはありがたい。
ルのメニューは仕入れによって毎日変わるが、今の時期なら「岩かき」(1個300円)が登場する日が多い。ちょうど産卵前にあたり、身がぷっくり太って旬である。この日のものは茨城県鹿島灘産。手のひらほどの殻の中で、艶やかに輝く乳白色の身は見た目にもおいしそう。つるりと口に流し込んで食べれば、とたんにミルキーな旨みと甘みが溢れ出す。同時に鼻を抜ける磯の香りは非常に爽やかで、どこかフルーティー。そして、何といっても、プリプリとした弾力の歯ごたえが魅力的である。
そのままでも充分旨い「岩かき」だが、添えられたレモンやポン酢で食すのも良い。より爽やかになる。
「鯵のりゅうきゅう」
「本鱒刺身」と、ぶ厚く切られた「鰹のたたき」(750円)。
こでは、魚料理が充実している。大分の漁師料理「りゅうきゅう」がベースになっている「鯵のりゅうきゅう」(800円)は、細切りにしたアジを、たまり醤油、のり、ネギ、ごまなどで和えたひと品。プリッと新鮮な長崎産のアジは、薬味と和えることでさっぱりするとともに、本来の旨みがいっそう引き出されている。シンプルで豪快な、大分県の郷土料理だ。また、本マスも今が旬。漁獲量が少なく「幻の魚」などと称され、高級料亭でも扱われる魚だ。オレンジ色が鮮やかな、北海道産「本鱒の刺身」は脂のノリがよく、舌の上でまろやかにとろけていく。とびきり新鮮でなければできない、と言われるこの刺身、価格は750円だ。
日本酒は、山口の「獺祭」(900円)や埼玉の「神亀」(950円)などもある。
ール、日本酒、焼酎、自家製梅酒など、幅広くアルコールは揃えられているが、岩ガキや刺身と抜群の相性を見せるのは日本酒だろう。ハルさんのお勧めは、山田錦を使用した富山の「銀盤(純米大吟醸 播州50)」(850円)。穏やかな香りで、すっきりとした淡麗辛口の味わいだ。岩ガキの磯の香りを邪魔せず、濃厚な海の旨みを引き立ててくれる。良い肴、良い酒、値ごろ感。それに加え、ハルには主人の人柄を映したような肩肘張らない空気が漂っている。毎日でも通いたくなる居酒屋だ。
ハル
ハル
TEL. 03-3710-5261
東京都目黒区上目黒2-24-14
営業:19時〜24時

定休日:月 *人数の多い場合は予約が安心


 
岩ガキ
岩ガキは、冬に旬を迎えるマガキと同じイタボガキ科に属する二枚貝。マガキよりも塩分が濃い外洋沿岸に生息し、干出しない(干潮時でも水面に現われない)岩に付着している。天然の岩ガキは、潜水によって漁獲される。殻が厚く、殻表は褐色、右殻の皮の突起が檜皮(ひわだ)状になっているのが特徴だ。マガキよりも大きく育ち、15年も経つと殻高20cm以上、重さ2kgにもなるという。市場に出回るのは、300g程度の3年目のものが多い。産卵期が7月から11月と長く、卵や精子を少しずつ出していくのも特徴だ。マガキのように短期間でいっせいに水ガキ(産卵後の薄い味わいのカキ)になることはないが、台風が来ると、波浪による刺激で急に放卵や放精をして、いっきに水ガキになってしまうという。

 

覆面編集部コメント
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(上)もろみを使ったドレッシングで和えられた「水茄子とカブのサラダ」(650円)。(中)香ばしい「アオリイカゲソあぶり」(550円)。(下)沖縄産の里芋に椎茸などを混ぜて揚げた「ヤムニのから揚げ」(600円)。
 
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ハルさんの沖縄好きが高じて、店には沖縄料理もあります。この日は沖縄旅行から帰ったばかりとのことで、現地で買ってきた珍しい野菜もありました(紫菜と呼ばれているそうです)。「紫菜炒め」(500円)としてメニューには登場していました。