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B食倶楽部 食べてきました!今週のピックアップB食店/vol.26
酒を酌みながら見る、初ガツオの包丁捌き「くおん(東京・恵比寿)」
店の入り口へと続く2つ目の階段には、上がり口に小さく店名が記されている(1つ目は路地に入る階段だ)。
の食材を使った和食を供する「くおん」は、1年前のオープン以来、おいしい料理と酒でファンが増えている店。東京・恵比寿の路地、2つの急な階段を登って辿り着く店の入り口は、飾り気のない木の扉だ。開けてあずき色ののれんをくぐれば、間接照明に照らされた長い木製カウンターが目に飛び込んでくる。店内にBGMはない。話し声と調理の音が混ざり合い、静かな活気が生まれている。
松さんがよく見えるのは、カウンターの右側。12席ほどのカウンターのほか、2つの小上がり、1つのテーブル席がある。
らっしゃいませ!」 山吹色の作務衣(さむえ)を着た男たちが出迎える中で、一番威勢がいいのは板長の松さんだ。オーナーでもある彼は、カウンターの中で包丁を握ったままやさしい笑顔を向けてくる。ここの特等席は、そんな松さんの目の前、カウンター右寄りの席である。大きなまな板が目の前に広がり、料理を作る彼の手元を良く見ることができる場所。手際良く、つぎつぎと料理が作られていく風景はショーのようで、飽きることはないだろう。
書きのメニューは毎日変わる。どれもおいしそうなので、迷ったら松さんに、今日一番のおすすめを聞こう。野菜、魚、肉。くおんにはおいしい食材が揃っている。特に旬の魚に力を入れ、今の時期なら、岩カキ、生サクラエビ、生シラス、そしてアナゴの稚魚のれそれなどが登場する。「生シラスはあと味の苦味が楽しみですが、のれそれは、香りと歯ごたえがバツグン。両者はずいぶんと違うよ」。松さんが話すように、12cmほどの長さののれそれは、コリコリして歯ごたえがしっかりしている。ツルっとところてんのように滑り込む喉ごしも、生シラスとはぜんぜん違う。毎朝、松さんが真剣に仕入れる旬の魚は、とても新鮮でおいしいことが分かる。
左上より時計回りに、のれそれ、生シラス、生ガキ、生サクラエビ。
南アジアから黒潮に乗ってカツオが北上するこの時期、くおんではほぼ毎日、初ガツオが登場する。「今年はとくに余分な脂がなく、さっぱりしていていいね」、と松さんが褒める初ガツオだ。実は3月から扱っているという。
「出始めの頃は八丈島の初ガツオだったんだけど、これが3.5kgあって良かったんだよ。毎日手に入るものじゃなかったけど、素晴らしかったね」。
そんな話を聞いても、今日の初ガツオはどうなのかと、この店で心配する必要はない。
「今頃(5月)からは勝浦産が中心。1.8から2kgとちょっと小さくなるんだけど、もちろんこれもおいしいよ」とのこと。この日はめずらしく、3.5kgある勝浦の初ガツオが入っていて、それを堪能することができた。
南紀・勝浦の初ガツオ。3.5kgの丸々と太った初ガツオは、脂も程よく乗っていた。

日本酒の出し方も、お盆を利用して和風にアレンジ。
っぱりしていることから、よくサラダにもなる初ガツオだが、くおんでは刺身で出す。運ばれてくるまで酒を飲みながら待とう。店には、日本酒、焼酎、ワインと揃うが、「和食には日本酒が一番」という松さんおすすめの「独楽蔵(こまくら)  玄 2001」(1合1200円)を楽しむ。ふっくらとした米の味が伝わる、熟成された純米吟醸酒だ。酒を堪能していると、松さんは冷蔵庫から取り出したカツオのさくをまな板に乗せ、刺身包丁でサッと切り込んでいく。一定のリズムを保って、そしてとても丁寧に切り分ける。角の立ったカツオの刺身が出来る光景は垂涎もので、思わず酒に手を伸ばしてしまう。
高く盛り付けられた初ガツオの刺身は、角がピカーッと光り、白から赤へ変わる色のグラデーションも美しい。ネショウガ、ワケギ、シソの実を醤油に合わせ、つけて食べる。しこしこと弾力ある歯ごたえと共に、さっぱりとしたカツオの甘さが口に広がる。トロのように脂っぽい戻りガツオとは対照的だ。この上品な甘さが、いつまでも口中に余韻を残してくれるのがうれしい。
「新ジャガと新玉葱の肉ジャガ」(1200円)
おんでは、魚だけでなく野菜の旬も大切にしている。京都の契約農家から直接送ってもらっているという野菜は、新タマネギ、たらの芽、オクラなど、季節のものばかり。ぜひ、いろいろな料理を楽しんでもらいたい。そして、酒と料理をたっぷりと味わったのなら、「炙り〆鯖の棒寿司」(1300円)で締めるのがおすすめだ。これは、サバの押し寿司に似たもので、最後にガスバーナーで炙る。こちらも松さんの見事な仕事ぶりに見とれてしまうだろう。包丁さばきや盛り付けなど、おいしい料理が生まれる光景をじっくりと見ることのできるくおん。舌と目で食事をする楽しみを、たっぷりと教えてくれる店である。
「炙り〆鯖の棒寿司」は店の人気料理の1つ。梅酢に漬けたミョウガもおいしい。
くおん
くおん
TEL. 03-3793-1319
東京都渋谷区恵比寿南1-14-15 ラ・レンヌ恵比寿4F
営業:18時~24時LO(土~23時LO)
定休日:日

 
カツオの栄養
「まな板に 小判一枚 初鰹」と詠まれたほど、江戸時代の初ガツオは高いお金を払ってまで食べる人気があった(当時の月収が2両程度なのに対して、初ガツオは1本1~2両したという)。たんぱく質が豊富で、ビタミンBや鉄分が多く含まれ、貧血の人やお酒を飲む人に良いといわれている。また、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、脳血栓や動脈硬化を予防する働きをするEPA(エイコサペンタエン酸)、脳細胞を活発にするというDHA(ドコサヘキサエン酸)なども含まれている。脂の多い戻りガツオは、初ガツオよりもカロリーが1.5倍近くあるが、カルシウムは初ガツオの方が多い。さくや刺身でカツオを購入する際は、血合いの部分が深い赤色のもの、脂の部分が白に近いピンク色のものがおすすめだという。見た目にも脂っぽいものはよくないそうだ。
覆面編集部コメント

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くおんには焼酎もあり、水割りやお湯割りは、蔵元の水を使って和水してあります。上の写真は「和水一合」、下は「グラス」です。
 
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飲める焼酎の一部です。「鉄幹 黒麹」(芋/鹿児島・グラス800円)、「貴匠蔵」(芋/鹿児島・グラス800円、和水一合1200円)、「豪気」(米/福岡・グラス700円、和水一合1200円)
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お通し(写真上)も上品にでてきます。この日は、「白ウリの鶏そぼろ煮」と「インゲンのすり流し、ホタルイカ入り」でした。さっぱりしていて、乾いたのどを潤してくれました。「生ホタルイカの自家製沖づけ」(900円/写真中)は、日本酒に合う絶品。「出汁巻玉子」(900円)も店の人気メニューです。
 
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店名は「九音」から来ているそうです。店内には、9つの音を表現した漢字が色紙に書かれています。