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B食倶楽部 食べてきました!今週のピックアップB食店/vol.23
日本酒好きの美人女将の天ぷら
「満まる(東京・四谷)」
満月の中で丸くなる、うさぎの絵が目印。
見さんお断り」と言われそうな小料理屋から、まっ暗なロックバーまでさまざまな店が並ぶ東京・荒木町。おいしい酒と肴を出す店が多く、夜な夜な酒飲みが集まる横丁だ。会社帰りに毎晩でも立ち寄れる荒木町には、高級な店はほとんど存在しない。丁寧に掃除された敲(たた)きに丸い提燈が上品に光る「満まる」(まんまる)も、一見敷居を高く感じる店構えだが、じつはまったく違う。
いかなごの佃煮は、「太陽」の蔵元から。
ウンター席だけの満まるは、8人も座るといっぱいになってしまう小料理屋だ。靴を脱いで、赤い座布団が敷かれた長椅子をまたぐのは常連さんばかり。しかし、初めてのお客にも和服姿の女将は満面の笑顔で出迎えてくれる。緊張しながらも、カウンターの中に入り込めばこちらのものだ。料理と女将しか見えない空間からは、昔からこの店を知っているような安らぎが沸いてくる。「日本酒の蔵元の奥さんが送ってくれたんですよ」といって、いかなご(玉筋魚)の佃煮を出してくれる。お通しが出る前のいきなりのサービスに、さっそく笑顔がこぼれてしまう。
カウンターの上には菜の花やそらまめなど、旬の食材が山盛りだ。
白で美人の女将、竹内一美さんは日本酒が大好きだと話す。「気仙沼産カスベ唐揚げ」(850円)、「北海道産赤カレイ煮付」(1300円)、「新潟産くさや」(1200円)など、壁の短冊には、魚を中心に日本酒に合いそうな料理の名前が並んでいる。旬の食材を使った料理も豊富で、今の時期なら「タラの芽とふきのとうの天ぷら」(850円)が楽しめる。カウンターからはザルに盛られた食材が見えるが、青々としたタラの芽やふきのとうは、鼻を近づければ土の匂いがしてきそうだ。揚げたての天ぷらは、朱色の盆に盛られてスッと目の前に置かれる。胡椒を混ぜた塩で食べると、春野菜の苦味が口いっぱいに広がってくる。新鮮なふきのとうは一口では噛み切れないので、もったいないと惜しみながらも丸ごと口に放り込む。苦味とゴマ油が一緒になった旨味の余韻を、いつまでも楽しむことができる。
青々とした、ふきのとうとタラの芽の天ぷら。
受け皿からもあふれ出そうなほど、日本酒はたっぷりと注がれる。
ほどのいかなごをくれた酒蔵の「太陽 原酒(特別本醸造)」(1合600円)と一緒に味わう。明石(兵庫県)の太陽酒造の酒は、やや甘くてふくよか。しかしすっきりとしているので、油っぽい天ぷらとも十分に楽しめる。タラの芽とふきのとうが持つ土の味わいは、日本酒にとてもよく合う。このほか太陽は「純米吟醸」、「生にごり酒・純米吟醸」(各1合800円)がある。日本酒を頼むと「升ですか。グラスですか」と聞かれるので、女性には切子の入った赤いワイングラスがおすすめかもしれない。また、グラスもヒノキの升も、どちらもたっぷりと大きな受け皿に酒をこぼしてくれることに驚く。結局2杯分ある。女将は、酒好きが一番喜ぶことを知っているようだ。
「太陽 原酒」特別本醸造 「太陽 明石」純米吟醸
のほか、「焼きネギ」(300円)、「焼空豆」(700円)、「菜の花のからし合え」(500円)、「焼き筍」(750円)など旬の食材の料理は、どれも滋味あふれる素晴らしい味で、すべてにおいてひと手間かけられている。焼きネギには焼いたどんこしいたけが付き、酢味噌とモロミが添えられている。焼きたけのこの脇には、ぜんまいのおひたしだ。
焼きネギ 焼空豆 菜の花のからし合え 焼き筍
左から「焼きネギ」「焼き空豆」「菜の花のからし合え」「焼き筍」。春の食材を使った料理オンパレード。
ホタルイカ
サービスで出てきた「ホタルイカ」。炙るためのライターも渡された。
いたホタルイカのサービスもあった。「ライターで炙って食べるのよ。ミソがこげてとても香ばしいから」と女将。どこまでも酒好きの心をくすぐってくれる。そんな女将の気遣いとおいしい料理が「また行かなきゃ」と思わせる満まる。「荒木町にはいいお店がたくさんありますから、また来てくださいね」という控えめな見送りの言葉にも、ジーンときたのであった。
満まる
満まる
東京都新宿区荒木町
営業: 18~23時
定休日:土日祝

 
荒木町
荒木町は、美濃高須藩主・松平摂津守の広大な屋敷の跡地に興された町。杉林が多く、植木屋が集まっていたことから、「新木坂」「荒木坂」と呼ばれていた。そこから荒木町と名づけられたという。滝もあり、明治初期にできた滝見の茶屋が発端となり、大正から昭和にかけては三業地として栄えた。三業地とは、料理屋、待合、芸者置き屋のことで、第二次世界大戦まで荒木町は花街だったのである。現在、小路が入り組んだ趣のある「車力門通り」には、割烹、小料理屋、寿司屋、イタリアン、喫茶店、バーなど、100軒近くの店が並んでいる。

 

覆面編集部コメント
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何を食べてもおいしく、気づいたらこんなにたくさん食べていました。上から「お通し」「厚焼き卵」「北海道活生タコ刺」(900円)「丹沢大山ざるどうふ」(500円)「焼カブ」(400円)。
 
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お店ではたくさんのウサギの小物がみつかります。これは女将がウサギ歳だからだそう。
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馴染みのお客さんの中には、本を出版している人たちも。書かれた本がカウンターには置かれています。