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B食倶楽部 食べてきました!今週のピックアップB食店/vol.15
クラシカルに楽しむ、洋食のあけぼの「たいめいけん(東京・日本橋)」
ショップカード
茂出木心護さんは大の凧好きだった。
看板はどこか凧のデザインを連想させる。
食屋の歴史を語れば必ずその名前がでてくる「たいめいけん」。本店「泰明軒」が開業した1885年(明治18年)は、初の洋食屋といわれる「上野精養軒」オープンの9年後である。1931年にのれん分けを許された茂出木心護さんの店が現在のたいめいけんであり、当時は新川(東京・八丁堀)にあった。1948年に日本橋に移ったのを機に、たいめいけんとひらがな表記にして57年が過ぎようとしている。
では、地上20階建ての「コレド日本橋」の陰になってしまったたいめいけんは、ツヤの出た木の扉、レンガの柱、磨かれた椅子やテーブルなど、スタッフに大切に護られてきたという店構えでお客を迎える。通りからよく見える1階は、オムライス(1650円)、ドライカレー(1550円)、ビーフカツレツ(ライス付き/1850円)などの洋食のほかに、ラーメン(650円〜)、カツ弁当(950円)、牛ヒレのステーキ丼(1050円)などもあり、食堂といった雰囲気だ。1階で一番高額な料理はヒレステーキ(2850円)である。一方、2階はもっとも高い料理がフォアグラトリュフ(15000円)というレストランで、メニューも少し違ってくる。
○○○
扉やじゅうたんなどは、
歴史を感じさせる古いもの。
階段はチリひとつなく 清掃されている。
階へと続く、じゅうたんが敷かれた階段を上ると、 “特別な食事”をする緊張感が沸いてくる。気が引き締まるのは、店の歴史が醸し出す貫禄からかもしれない。天井に音が響くにぎやかな階下とは対照的に、音楽のない静かな2階席は、談笑とカトラリーの音だけが聞こえてくる。木の梁が渡された天井、素朴な鉄製シャンデリア、壁に飾られた銅食器など、ヨーロッパにある山のレストランといったクラシックな雰囲気だ。白いテーブルクロスの上に乗せられた、菖蒲模様の紙製ランチョンマットや、和凧の柄のようなコースターが、「ハイカラ」という言葉を連想させる。
てメニューは、前菜、スープからはじまって、肉、魚、ご飯類と90種類以上が揃う。料理名は、“フライ”“クリーム煮”“チーズパン粉焼き”といった具合に、横文字を使わずにわかり易く昔のままに書かれている。1階と同じメニューが半分ほどあるが、値段は4割近く高い。「タンポポオムライス」(1階1850円/2階2700円)は、ふわふわのオムレツが、ケチャップご飯の上にポンと乗せられた有名な1品。まったく焦げ目のない見事に黄色いオムレツは、まぶしいくらいに美しい。ナイフをいれると半熟玉子がタンポポのようにライス上で開花し、食べればケチャップご飯には油っぽさがなく、お米の甘味が生かされていることがわかる。オムレツに使われている卵は、“特級のものを使用”というだけあってとても味が濃い。
タンポポオムライス
タンポポオムライス
ヤシライス」(1階1850円/2階2400円)は、ハッシュドビーフがミルクパンに入れられて出てくる。昔の人たちはこれを見て「ハイカラだね」といったに違いない、などと思いながら食べてみる。1週間煮込んだというデミグラスソースのハッシュドビーフは、牛肉と野菜の旨みが染みたやわらかい味わいだ。
ハヤシライス
ハヤシライス
本オリジナルの西洋料理「メンチカツレツ」(1階・ライス付き1550円/2階・単品2400円)も、とても細かくミンチされた牛肉の上品な甘さが特徴だ。油が上質なのか、胃にもたれずにパクパクと食べることができる。そして、2階でのみ食べられる「オックステール」(3000円)は、たんぱく質とコラーゲンが多く含まれた牛肉の尾を、デミグラスソースでじっくり煮込んだ極上のシチュー。こぶしほどのテールが3つ入ってボリュウムもたっぷりだ。コラーゲンでコクの出たソースは、ごはんにもパンにも合う。1階と2階で味が違う、という噂もあるたいめいけんだが、下のフロアでぜひ味わいたいものがある。パリっとしたレタスと、フレンチドレッシングでマリネされたキャベツの「コールスロー」である。たいめいけん開業からあるメニューで、1階では当時の価格(50円)でサイドオーダーできる(2階は単品650円)。
メンチカツレツ メンチカツレツ
オックステール メンチカツレツ
コースター
鮮やかな色使いのコースター。
店のマークは「たい」の文字を
デフォルメしている。
、コースター、ランチョンマット、そして、盛り付け方にも、時代を感じるたいめいけん。肉やフライに付け合わされる野菜は、ジャガイモ、にんじん、いんげんと決められ、お皿のバリエーションも少ない。見栄えで勝負するのではなく、旨い料理を気取らずに楽しんで欲しい、と店はいっているようだ。決してお客に背を向けず、つねに声がかかるのをスタンバイしているスタッフたちは、たいめいけんの誇りでもある。蝶ネクタイを締めた初老の男性、白いエプロンをつけた年配の女性など、年季の入ったスタッフたちのソツのないサービスからも、創業50年以上の歴史と威厳を感じることができるのである。
たいめいけん
たいめいけん
TEL. 03-3271‐2465
東京都中央区日本橋1‐12‐10
営業: 1階=11時〜20時30分LO(日祝〜20時LO)
2階=11時〜15時/17〜20時LO
定休日:1階=無休/2階=日祝
http://www.taimeiken.co.jp/

 
洋食屋の歴史

本格的な洋食屋の第1号といわれているのは、1876年に上野にオープンした「上野精養軒」だ。創業開始からあるソースかつ丼は今でも人気だ。翌年、1753年からの歴史を持つ「東京風月堂」が銀座でフランス料理を開業し、日本で始めてカレーライスを紹介した。カレーのほか、オムレツ、ビフテキなどがメニューには登場。「泰明軒」が開業した1885年の10年後に「煉瓦亭」はオープンした。ポークカツレツ、ハッシュドビーフ、オムライスなどを考案して有名になった。これらは今でもメニューに並んでいる。またこのころには、洋食屋や家庭でカレーライスが登場するようになった。1902年からソーダ水やアイスクリームを扱っていた「資生堂パーラー」がレストランを開業したのは1928年。ミートクロケットやビーフカレーなどが看板メニューとなり、これらは現在でも食べることができる。そして、1950年代に入ると「銀座キャンドル」「銀之塔」など、銀座には洋食屋が次々とオープンしていった。

覆面編集部コメント
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似ていますが味はぜんぜん違います。上はレタス中心の「レタースサラダ」(800円)、下はキャベツを使った「コールスロー」(600円)。
 
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トイレのマークも、おしゃれに「西洋」していました。
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2階席で使われている、紙製のランチョンマット。
 
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自家製のパンは甘くてバターたっぷり。