| ず わいがに(オス)は、約15センチの甲羅に、長さ30センチの脚が付いているため、頭矮(ずわい/矮=たけの短い)といわれるカニ。日本海、太平洋、大西洋、北極海と世界中に分布するが、日本でずわいの誉れが高いのは松葉かにと越前かにだ。本場の松葉かにを食べに出かけたのは、兵庫県北部の竹野町。朝に水揚げされた活松葉かにを、これでもか!と食べることができた。 |
 | 刺身、しゃぶしゃぶ、鍋用に盛られた松葉かに(3人前)。 透き通る身が鮮度のよさを示している 。 | 城 崎郡竹野町は、日本海を眼前に臨む兵庫県の北の端。大阪から特急で約3時間、JR竹野駅に到着する。夏は海水浴場として栄えるが、冬の旅館や民宿では松葉かにで観光客をもてなす。そのひとつ「はまや」も、(宿泊しなくても)松葉かにを1人 1杯食べることのできる旅館だ。お客がチェックアウトして静かになった正午、竹野駅から送迎の車ではまやに着くと、通された広間は磯の香りでいっぱいだった。中央の囲炉裏では炭がおこされ、となりには網が乗った七輪が鎮座している。奥の座卓に並ぶのは、鍋、野菜、お造り、香の物そして山盛りになったかに。なみなみと味噌の入った甲羅も見える。刺し身、炭焼き、しゃぶしゃぶ、かにすき、味噌と、ふんだんに松葉かにを楽しむ準備ができていた。 |
 | | まずは刺身で。そして、しゃぶしゃぶで。。 | |
| ず わいがにのオスは脚を伸ばすと全長が約80センチ(「せこがに」「こうばこがに」と呼ばれるメスはオスの約半分の大きさ)。はまやで出てくるのは、今朝水揚げされたばかりのオスの活「松葉かに」である。ロシアなどの外国産にくらべて脚が細長く華奢(きゃしゃ)に見えるが、それでも1本の幅は3センチある。 「まずは、お刺身でどうぞ」 炭火を七輪に移している仲居さんに言われ、一番太い脚を生でいただく。なかなか身と殻が離れず垂涎だけが先走るが、やっとはずれて口に運ぶ。舌の上でするっと滑り、噛んでいいのか啜ったらいいのかちょっと戸惑う食感だ。噛んでみると、やわらかい歯ごたえで上品な甘みが広がった。輸入ずわいがにでは味わえない、活松葉かにの甘さだった。 |
 | | より甘味が感じられる、炭火で焼かれたかに。 |  | | さっと湯がいて味噌と一緒に。 | 湯 気を出している鍋に殻を放り込み(ダシにする)、もう1本刺身でいこうかと手を伸ばしていると、焼きあがった脚が皿に乗せられた。 「こちらは熱いうちに。塩を振ってありますのでそのまま召し上がれますよ」 というすすめに従って、炭火焼きがにを頬張る。香ばしさが鼻に抜け、刺身よりも強い甘味がいつまで口の中に残った。もっと炭焼きで食べたいところを我慢して、まずは一通りの方法で食すことを決意。次の1本は鍋で湯がいてしゃぶしゃぶだ。細胞の1つ1つまで広がったような脚の身は、まるで白い花が開いたよう。やさしい味わいなので、かに味噌を添えてみる。至福の組み合わせであることが判った。 |
 | | 日本酒を入れて、最後までかに味噌を堪能。 | ず わいがには、死ぬと強力な消化酵素で自分の内臓を溶かすという。半日もすれば、かに味噌は解けて身に染み込む(だから、冷凍ものは脚だけ売られることが多い)のだが、そんな心配を余所にして、兵庫県の地酒で新鮮なかに味噌をたっぷり楽しむ。その後は、白菜、きのこ、豆腐などと一緒にかにすきを堪能し、「もう入らない!」と思われたかに雑炊をぺろっと食べて締めとなった。かに1杯を食べるのはこんなに大変なのかという苦しみと、口中に余韻が残るやさしい甘さを体験した昼食となった。 |
 | | 港と船の名前を記したタグ | 松 葉かには、セリで1杯1万円以上の値が付くことも多い高級ずわいがに。山陰への安い旅行パックには注意が必要だ。冷凍ずわいを出して、コストを抑えていることもあるらしい。地元で獲れた松葉かになら、水揚げされた港や捕獲した船の名前の入ったプラスチックのタグが付けられているので、それを目安にしたい。今回食べた料理(飲み物含まず)は1万2000円。「兵庫県柴山港 松栄丸」と書かれた赤いタグが付けられていた。高いか安いかはそれぞれの価値観だが、「うまいかにを腹いっぱい食べてみたい!」という人にはおすすめの、保証タグ付き最高級ずわいがにである。 |
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