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2007年7月7日(土曜日)
   
友人が企んでいた(笑)、完熟杏のデザート@「花冠」企画。

こちらに届けられた杏の収穫時、
熟しすぎてしまったものが出ると、やまさ農園さんに
伺ったので、それを使わせていただくことに。

友人が、朝、頑張ってお店に運んだものを、
その夜、コースとしてアレンジしていただきました。

お料理、全部載せるには写真が足りないので、
印象に残ったものを、ピックアップしてご紹介。

あら・・?生春巻。
なんと、杏と雲丹入りですって!

黄にらを一緒に巻き込んで。
カリカリした食感の、粗い粒塩がのっています。

杏と雲丹なんて・・・初めての組み合わせ!
色は、同じオレンジ色だけれど・・。
果たして、合うのかしら?

杏のとろっとした甘酸っぱさと、雲丹独特の甘さとが、
うーん、いい塩梅にとろけあってゆく・・。

これは、意外なミスマッチかも。
夏らしい、海と山の幸の競演〜♪
これ、すごーく大きな角皿で、輝くような見事な海老が、
ぷる〜ん!という感じで、たっぷり盛り付けられていて!

海老好きとしては、なんとも、心踊りました〜。

松本シェフ曰く、海老って、中国では
「溜菜(リュウツァイ)」=あんかけ物
と言って、こんなふうに、たたいて平たくのばしたものに、
片栗をまぶして、湯にくぐらせて、葛に閉じ込めたような
感じにして、いただくんですって。

つるん、ぷりん、という感じで、口の中に
滑っていきます。
んー、海老さんありがとう!!と言いたい贅沢〜!

このつけダレが、完熟杏入り!
杏の酸味に、ほんの少し酢も足してあって、
あとはゴマ油と醤油・・。

杏というと、杏仁豆腐を連想しますが、
そうか、中華料理に杏。
やっぱり、いい相性かも知れない。
これなら、すぐに真似できそう〜。

下に添えてあるきゅうりも、太い形のままで、
ポリポリ音を立てる心地よさなのですが、
いい感じに塩もみしてあって!
これは、豚の角煮。
角煮って、お箸でつまんでも、ほろほろと
脂身が崩れる、このやわらかさがいいですよね〜。

こんなふうに、上手に煮たい〜って、そもそも、
素材の選び方からして、心しないと駄目だと思うけれど。

こちらも・・杏と一緒に煮てあります!
豚肉と、杏と白髪葱・・・絶妙に合う!
酢豚にも合いそう〜。

濃厚な煮汁なんだけれど、杏が入ることで、
とろりとまろやかな甘み、酸味に。

あぁ、なんだか、昨年の、大手町・杏露酒スイーツカフェを、
思い出しました。杏入りのカレーとか、ありましたよね。

杏は、デザートだけかと思っていたのに、
こんなふうに、お料理にも使っていただけるなんて〜!

間には、もちろん、杏を使わないお料理もあって、
これがまた、色々と興味深かった。

前日まで青森にいらしていたというシェフ、
そこで「買いしめてきちゃいました」という
「野辺地納豆」という、すごく粒の大きい納豆や。

いかの塩辛、最初、冷たいものをいただいたのですが、
「あったかい塩辛って、食べたことある?」
と、後から、ご飯に乗っけて出してくださったもの。
これが、めちゃくちゃやわらかくて、白子・・?と
思うほど。

研究所長もといシェフ曰く、いかって、3枚の皮が
あって、3枚目が一番硬いんだそう。
そこまでむいてしまうと、そんなふうに、
いかとは思えない、不思議なやわらかさに
なるんですって。

この日は、シェフがレコール・バンタンで教えていらした、
卒業生の皆さんが、お店を訪ねていらしていて。
シェフ、クラスの生徒全員、あだ名をつけてらしたそう。

ある時のテストは、
「食材しりとりで、20周まわせたら、全員テスト免除」
としてみたり。

写真を見て、食材の名前を書く問題の添削も、
シェフらしい視点の厳しさで、
「サバは駄目。マサバじゃないと。だって、ゴマサバもいるでしょ」
「手羽はダメ。だって、手羽先も手羽元もあって、
店で発注する時、手羽先だけでいいのに、全部ついたのが
来ちゃったら、困るでしょ」

等々・・・もう、楽しい話が尽きません。

ちなみに我々は、松本研究所にとっての実験台だそうで、
「あそこにいる人たちはね、店に来て、冷蔵庫の
食材を食い尽くして、空にして去っていく、
いわば暴走族みたいな人たちって感じかな」
と、評されていました。

相変わらず、冴え渡るシェフの舌鋒。(^_^;)
そして、デザートにも、もちろん杏!

このお店に行ったら、絶対これを食べなきゃ!の、
ガンジーミルクチーズ。

それに添えられるは・・
わーい、半割の杏コンポートだ〜。
すごく大きい!!
これが、「幸福丸」という品種なんですね。

かなり熟していたので、崩れてしまわないよう、
杏自体は火にかけず、白ワイン入りの
熱いシロップの中に、杏を漬け込んだんですって。

杏の白ワインコンポート。作りたくなりますね〜。

単体で食べてもすごく美味しい!のですが、
これを、濃厚で、かつヨーグルトのようにさっぱりの
ガンジーチーズと合わせると、これまた・・!
下には、あれ?粒あんが、寒天と一緒に・・。

そうか!杏あんみつのイメージだぁ、と言ったら、
「でしょ?杏って言ったら、やっぱり、杏あんみつでしょ!
それで、寒天と粒餡の上から、ガンジーをそのまま、
流し固めてみたわけ」
と、目を輝かせるシェフ。杏あんみつ、お好きなようで・・。

このお店は、徹底して、シェフのお気に入りのみで、
メニューが構成されてるものなぁ。

今度、シェフお気に入りのガンジーミルクの工場も
稼動されるらしく、買えるようになるんですって。
この方の行動は本当に、とどまるところを
知らないな・・。

実は、これだけ堪能させていただいた杏、
届いたものを、少し選り分けたため、
全部で15個ほどだったそうで・・。

そんなに少なくても、4人分で、こんなに、
杏づくしのコースにしていただけたなんて、
ちょっとびっくり。

しかも、デザートには、定番の季節の果物ジェラートで、
赤いキレイなプラムに、この日、たまたま届いた、
熊本産のマンゴーまでサービスしていただいて、
盛りだくさんでした!

プラムのジェラート・・・すっぱくて、すごく好み。
美味しかった〜!!
でも、シェフ曰く、1週間ずつくらいで、どんどん、
別の果物に変わるらしいので、気になる方は、お急ぎを!

「この杏の種から、杏仁霜取らないんですか?」
と友人が聞いたら、
「もう、別のところで干してあるよ?」と、
さも当然のようにおっしゃるのも、さすが。

でも、「まかない用にね」と。
あらら・・量が少なすぎるから、ということで、残念〜・・!
(しかし、まかないに込める気合がすごい・・)

花冠の、自家製杏仁豆腐、いつか、いただけると
いいなぁ。

松本シェフ、そして、完熟杏を送ってくださった、
やまさ農園さん、それに、今回、企画をしてくれた
友人にも、大感謝。

杏の季節、いよいよこれからピークを迎えます♪
B食店情報
・店名 : 花冠(はなかんむり)
・ジャンル : バー
・住所 : 東京都目黒区目黒2-15-3
・TEL : 03-3760-9760
・営業時間 : 18:00?24:00(フードL.O.22:00/BARtime22:00?)
・定休日 : 不定
・最寄り駅 : 中目黒駅から徒歩15分
・キーワード : 若き天才料理人松本栄文氏が料理長を努めるバー
・友人・同僚
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2007年6月10日(日曜日)
   
「青柳」で、小山裕久氏のお話を伺いながら、
鮎の塩焼きをいただく、という会がありました。

6月といえば、鮎の季節。
「香魚」とも言われる鮎。

今回は、「鮎づくし」ではなく、
「鮎の塩焼き」主役に、この時期に美味しいものを
コースにしていただきました。

じゅんさいの先附ののち、付き出しの先八寸。

それぞれ、趣向の凝らされた品が少しずつ
味わえるのが楽しい。

蛸の煮物は、小豆と一緒に煮てあります。
蛸は、やわらかく煮ようと思っても、
煮ているうちに色が薄くなるからと、
醤油を多く入れると、身が硬くなってしまう。

蛸の皮の色に見えるのは、実は小豆の色。
醤油もごく少なめなので、薄味で上品で、
とってもやわらかい。
ちょっと意外な組み合わせだったけれど・・
なるほど、納得です。

青唐辛子と、揚げじゃこを和えたもの。
ほのかに山葵が効いた、
サクサクの根芋(白ずいき)の海苔和え。
山芋もずく。大徳寺麩の白和え。
これまた意外なミスマッチの、いちじくの白胡麻和え。

手前の、「吉」という蓋付珍味入れに入っているのは、
お店名物の「百年卵」ですって。
食べてみると・・・あ、ピータンを叩いたものだ。

小山氏曰く、ピータンが苦手という人が
多いのは、あの、白身(というか黒身?)と
黄身の食感の違いを、舌が怖がるからだろうと。
だから、こうして叩いて混ぜてしまうと、
「何これ?蟹ミソ?」なんて、召し上がれて
しまう方が多いのだとか。

この命名には由来があり、小山氏が、ロブション氏に、
この付き出しを教えたところ、
「じゃあ、フランスでピータンを何て言うか知ってるか」
と切り替えされた。聞けば、
「ウフ・ア・ラ・サン(cent)」と。

サン(cent)は、百。つまり、百年卵。
そこから、名前をつけたそうです。
さらに後日談があり、アメリカ人にこの話をしたところ、
「じゃあ、英語で何て言うか知ってるか」と。

実は・・・「サウザンド・エッグ」(千年卵)だそうです!
嘘のような、本当の話だとか・・。(^^ゞ
小山氏は、徳島の「古今青柳」を、最近、
鳴門海峡に面した島田島に移されたとのこと。

この時期、わざわざ遠方から、鮎を食べに
そちらまでいらっしゃるお客様もおいでだそうです。
1つ1つの部屋に火床があって、庭で焼くのだとか。

青柳の鮎は徳島・勝部川の天然遡上の鮎を
使うことが多いそうです。
天然物といっても、実は、琵琶湖で育った稚魚を
放流したものが多いそうで、正真正銘の天然育ち
というのは、非常に希少だそう。

東京には、そもそも、運ぶのがかなり困難なため、
特別な注文がある時以外、鮎はお出しにならず、
ひと夏に2−3回程度、出す機会があるか・・
といったものなのだそうです。

当日では間に合わなかったため、届いたのは
前日ということでしたが、まだ生きた鮎に、
串を打っていく。
鮎って、とてもデリケートで、ちょっとしたことで、
すぐ弱ってしまうんですって。

一雨来る前が美味しい。
そろそろ雨が降るだろうから、その前でよかった、と。
雨で川の水が増すと、酸素が少なくなって、
鮎が痩せてしまうんですって。

串を打った後、竹串を裂いて横串を差す。
その横串に、鮎の油が回って、独特の
香りが移るんですって。

火床の中で、じっくり、25分ほどしっかりと焼く。
焼き上がりに、この竹串を入れて、
鮎をスモークする形にする。

鮎をのせて運ばれてきた竹籠の中から、
本当に、煙が立ち込めてきました。
火床には、遠赤外線が沢山出る
備長炭を使います。

焼けるということは、内臓の水分が沸騰する
ということ。
普通は、その前に、ひれが焼け焦げて
しまうので、化粧塩をする。

それが、普通だと思っていました。
鮎の塩焼きって、そういうものなのだと。
でも、この鮎は、それをしていない。

それでも、頭は、から揚げにしたようにカリカリに。
身の部分はしっとりと。
ひれは、干物のように水分が飛んだ状態になって、
見事に均一に、焼きあがっているのです。

焼きはじめは炭を全体に広げますが、
位置を変えたり、そして、煽ることも大事。
熱風を、どのように当てるかによって、
各部位が、すべて美味しく焼けるように、
よく考えながら焼くのだそうです。

頭がこんなふうになるのは、串を打った
鮎を、頭が下になるよう、少し傾けるため。

若かりし頃の小山氏、焼いている間に、
鮎の脂が落ちるのを見ながら、
これを、お客様にも味わってもらいたいな、
と思って、ひらめいたのがこの方法だったそう。

香りのよい脂が、鮎の身を伝って、
頭に流れ、わずかに開いたエラの部分にたまる。
そこから、頭蓋骨に回って、沸点の高い油で
揚げたような状態になるんだそう。
これも、生きた鮎を調理してこそで、死んで
いると、エラが閉じてダメなのだそうです。

このやり方で始めた頃は、
「青柳の鮎、あれは何だ、焼きすぎだ」
と、言われることも多かったとのこと。

でも、最近は、“しっかり焼くとあゆは美味しい”
ということが、だんだんと認められるように
なってきたと思う、と小山氏。

本当に、こんなにしっかりと焼かれた鮎、
初めて見ました・・。
身がとてもしっかりしており、
放流されて育った鮎とでは、顔も姿も
全く異なる、という言葉どおり。

猛々しい顔つきですね〜。

頭部分は、香ばしくカリカリ。
でも、身はしっとり。

ひれだけでも、鮎の香りがするのを楽しんで、
と言われました。

ひれ酒ってあるけれど、鮎のひれは、
ただ、カリカリした食感だけでなく、
他のどんな魚よりも、たとえば、
「目をつぶって食べても鮎だとわかる」
と小山氏がおっしゃるくらい、香り豊かなんですって。
もう1つ、鮎を使った雑炊が、また美味しかったこと!

白味噌仕立て、というのが、ちょっと意外だった
のですが、実に滋味〜。
鮎の味や身の締まりがしっかりしているので、
汁に入れても負けないのです。

徳島の方って、確か、お雑煮も味噌仕立てに
餡入り餅でしたっけ・・。

小口切りのねぎは、下関で、ふぐに合わせて
使われるものだそうです。
水耕栽培ではなく、ちゃんと、大地に生える
ねぎで、香りがしっかりあり、これとふぐは、
セットで美味しい、とのこと。

一生に何度もいただけるわけではない、
本当に、一期一会の鮎だったと思います。
この味を、忘れないようにしておきたいです。
貴重な機会に恵まれたことに、感謝しつつ・・。
2006年12月26日(火曜日)
   
巣鴨、加瀬政には、名物鍋が3種類あります。

文字通り、鴨を使った巣鴨鍋。
馬肉の桜鍋。そして、鱈を使ったじゃっぱ鍋。

友人が、じゃっぱ鍋の会を企画してくれました。
しかもクリスマスイブの日曜に(笑)。

鱈の鍋。
正直に言ってしまえば、前二者よりも、普通に思える。

が、しかし、噂によれば、これを食べると、
「今まで食べた鱈鍋って、何だったの?」
と、茫然たらしめるものらしい・・
それって、一体、どんな鍋?!

こんな鍋でした。

・・・・すごい。これ・・鱈?
白子が・・肝が・・溢れてこぼれそうなんですが。

鱈って、もっと、白いイメージが・・
って、冷凍切り身だからなのね・・。
こんなに新鮮で、血の色が透けるような、
美しいピンク色・・。

真中やや右よりの、特にピンクの濃い物は、
「腸」だそうです。
これ、煮ると、コリコリ、きゅっきゅっとした
噛み応えに・・。くじらの百ひろみたいな。

目玉ににらまれましたー。
ちなみに、これは、かま争奪ジャンケン大会が
繰り広げられたました・・。
あぁ!この虹色は、カンテ・サンス
見た、奇跡の光彩だわ〜。

・・・こんなに、しっとり、ほろほろとした鱈・・
初めてです!!

びっくり。これは、本当に・・
今まで食べてた鱈鍋って、何だったの・・?
という感想です。
白子が、これまた美味しい・・。

おじさん曰く、15秒くらい、さっと湯通しする程度で。
箸を離さない。もう、しゃぶしゃぶですね。

とろけるようにクリーミー。
う。白子って、こんなに美味しいものなんだぁ・・。

あっという間に食べ尽くして。
最後は、雑炊かうどんで締め。

雑炊派多数。
こちら名物の「鴨さん卵」が登場!
サイズが、普通の鶏卵よりも、ひとまわり大きい。

ランチは、鴨の親子丼が有名なんですよね♪
うーん、それも食べてみたいです。

んー、雑炊も、美味しいったら!
白濁したスープに、卵がふんわり。

最初は、お塩で。
後半に、少し、鍋をいただいた
ポン酢を差すと、これまた、印象が変わって!

「じゃっぱ」って、津軽地方の方言で、
「残り物」といった意味なんですって。
鱈のアラや、白子など、残らず入れるため、
こう呼ばれるみたい。

残り物にしては、贅沢すぎる・・
いや、残り物に福、という感じかしら・・。

実は、初めて?かも知れない、ケーキのない
イブでしたが、あったかい美味しい鍋を囲んで、
とってもよいクリスマスでしたー。
B食店情報
・店名 : 加瀬政(かせまさ)
・ジャンル : 和食-鍋・しゃぶしゃぶ
・住所 : 東京都豊島区巣鴨3-14-16
・TEL : 03-3918-1286
・URL : http://www.hirame.com/kasemasa/
・営業時間 : 11:30?14:00、17:30?21:00(L.O.)
・定休日 : 月曜
・最寄り駅 : 巣鴨
・キーワード : じゃっぱ鍋、巣鴨鍋、桜鍋が名物。ランチは鴨の親子丼が人気。
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2006年10月18日(水曜日)
   
四條司家の庖丁儀式、を見学させて
いただく機会がありました。

四條司家は、奈良時代、藤原不比等の子、
いわゆる四家の北家にあたる、
房前の五男を祖とする血筋だそう。

平安時代、光孝天皇から、生類供養、
悪霊祓いのための式と作法を作る命を受け、
神道、仏教、陰陽道などを採り入れて、
この庖丁儀式を完成させたそうです。

以来、殿上人や大名などは、この儀式を
自ら行い、賓客をもてなし、切った素材を
調理して供してきたもの。

バックに流れる雅楽は、
龍笛(りゅうてき)、篳篥(ひちりき)、
笙(しょう)の基本三管です。
最初に、まな板の上で、儀式に使用する道具に
感謝をささげる、プレ儀式といったものが
執り行われた後、いよいよメインの儀式に。

素手に庖丁刀と真魚箸(まなばし)とを持ち、
素材に手をふれることなく、さばいていきます。
これは、食衛生の表れだとか。

勺のような形をした、面白い形の庖丁です。
両刃なんですよね、きっと。

海の素材が上位、河の素材が中位、
山の素材が下位とされつつも、室町以降、
鯉は上位とされたそうです。

それは、いわゆる、鯉の滝上りが、武家の
勇ましい精神を表しているとされたためです。
現在のご当主は、初代の魚名(うおな)から
第41代に当たるそう。

おそらくは、公家料理の伝統を確立した、
由緒正しい家筋の跡取として、幼い頃から
英才教育を受けていらしたのではと思いきや、
インタビュー記事によれば、
プロのロックミュージシャンを目指し、ドラマーとして
レコードも出した、という、意外なご経歴の持ち主。

四條家でも、庖丁儀式を執り行うこと自体が、
どちらかというと途絶えてしまっていたのを再興し、
日本料理の調理師への顕彰授与式を開催するように
なったのだそうです。

日本では、料理人の地位が、外国ほど、
社会的にあまり認められていない、とよく聞きます。

もちろん、職人の技術というものは、
顕彰されるかどうか、が問題ではないとは思いますが・・
きっと、励みになりますよね。

1.惣料匠(そうりょうしょう)
2.崇料匠(すうりょうしょう)
3.高料匠(こうりょうしょう)
4.初料匠(しょりょうしょう)
5.匠生(しょうせい)

という階位があるそうで、今回、匠生は、
全国80有余名の方が授与されました。

そういった伝統文化の見直しを通じて、料理人の
地位向上が、徐々に実現しているのかも知れませんね。
鯉の切り方だけで36通りもあるそうですが、
今回はその中で、「入船(いりふね)の鯉」を再現。

七福神が、船に宝物を積んで、
入船してくる様を表した、めでたい型だそうです。
この巻物、お話をしてくださった先生がお持ちの
古文献で、文久元年(1861年)四月十三日の献立表。

祝辞の中で、興味深かったのは、
日本料理は「返り味」の文化、というお話でした。

たとえば、お吸い物には、1.8Lの水に75gの鰹節、
10gの昆布のみで、ごく薄い味。
これは、すぐ舌先に感じる味というより、
飲み終わってから、後でじっくりと
感じられるような味だそう。

そう、日本料理って、繊細な味つけや
盛り付けのテクニックが、世界からも注目の的ですが、
本当に、感じるか感じないか、というほどの
さりげない風味の効かせ方が、真髄なのではないかと、

庖丁儀式は、単純な調理技術ではありません。
たとえば、日本料理にも流派があると言っても、
盛り付けを見たからといって、これは何流、とわかる
というようなものでもないそう。
精神的な指標、支柱といった部分も大きいそうです。

伝統芸能というか、様式美の世界、といった
雰囲気を感じさせますね。

1つ1つの所作に込められた意味を考えると、
とても奥深い、食を取り巻く、様々な文化の1つと
言えるのではないでしょうか。

貴重な体験をさせていただきました!
2006年9月21日(木曜日)
   
いつか、行きたいと思っていたお店の1つに、
天ぷらの「みかわ」がありました。

私、揚げ物って、普段、自分からは、
あまり好んで食べないんですね。
なので、専門店に行きたい、なんてことは、
ほとんど無いのですが。

それでも、行きたいと思っていたのは、
とにかく、周囲の友人達が「一度行かないと」
と、絶賛するので。
「揚げる」ことに対する見方が変わるって・・。

そんな折、ちょうど、こちらで会食の機会があり、
これは、ぜひ行かなくては!と。

八丁堀支店もあるのね。

写真は無しです。
この会は、そういう主旨の会なので。

私も、いつも、ジレンマを感じつつ、
でも、あまりにも美しいその料理やお菓子の姿を、
画としても残しておきたい、というその気持ちも、
痛いほどよくわかる。

ただ、写真は万能ではなく、それを見ても
わからない、だから、しっかりと自分の目に
焼き付けておかなくてはならないものが、
多々あると思います。

記録と、記憶は違う。
それをわかったうえで、写真にも収める。
少なくとも、そういう心構えは必要かな、と。

ご主人の、早乙女哲哉氏の「仕事」ぶり。
ほんの2時間ほどのことでしたが、
カウンター席で、圧倒され、魅了されました。

職人さんの手、というものは、実に
美しいものだと、日頃から思ってやまないのですが、
早乙女氏も、そういう手の持ち主でした。

粉をとく、その、手首の翻る様の、なんて
たおやかで、やさしいこと。

「踊りの先生が、『私より手首がやわらかい!』ってね。
そりゃ、こっちは45年、こうやってるんだから、
20年ばかし、踊ったってねぇ」

と、冗談めかすご主人。

45年。
それは本当に、毎日、毎日の小さな
積み重ねであり、その時間の重みを、
思わずにいられない。

みかわは、定休日以外で、お店を休んだことが
一度もないそうです。
長い人生の間には、病気もあれば災害も事故もあり、
生死の営みがあったことだろう、と。
それは、実は、かなり難しい、とても大変なこと
ではないかと思います。

逆に、どんな要人が相手でも、定休日に
特別にお店を開ける、といったことも
しないのだそう。

すみいかが、美味しかった。
才巻海老も、海老の頭も、きすも、めごちも、
松茸も、穴子も、それぞれ美味しかったけれど。

えっ?とびっくりしました。
「これが、いかの天ぷらなら、今まで食べていた
のは何だったの?って思いますよ。」
と、前置きで、本日のご指南役でいらっしゃる方に、
レクチャーを受けていたにも関わらず。

やわからくて・・すっと噛み切れるのに、
心地よい弾力があって。

綺麗な、そう、たとえば、きすならば、
片面だけにつけて、白身側を覆った衣が、
サクッと砕けた中から、水分がほどよく抜けて、
きゅっとしまった身が、ほろっとして。
そういう、とても綺麗な食感に、驚かされるのです。

油は何度くらいなんですか?の質問に、
「うちのは意外と低くて、160℃から210℃の間くらい。
 でも、よく、料理の先生とか、180℃で適温、なんて
 言ってるのは、実は違う」
と早乙女氏。

天ぷらの衣にも、素材にも、水分が含まれている。
その水分を介在して調理しているから、
100℃なんだ、と。

あ。なるほど。目からうろこ。

水分が飛んだところには、200℃といった油が
直接当たることになるけれど、だから、
天ぷらというのは、「蒸す」のと「焼く」のが、
同時進行で進む調理法なんですって。

だから、職人は、自分が、どの部分を、
どう調理して出したいか、素材を油に入れる時は、
もう、頭の中で計算をし終わっていないといけない。

「お粗末様でした、なんて言うのを聞くと、あれは
おかしいなぁって。お粗末なんて言うなら、
はじめから出すなよ、ってね。」

という早乙女氏は、静かで、確かな誇りに
裏打ちされたその腕をもって、ご自身が揚げたい、
お客さんに出したい、とイメージする天ぷらを
求めて、緻密な計算に基づいたうえで、
常に、真剣勝負をされているんだなぁと
思いました。

そのお姿が、私が、わけても愛してやまない、
菓子職人の方々のそれと、重なりました。

カテゴリーは違っても、一流の職人の方が
まとう雰囲気というのは、何か、共通して、
強く、惹きつけられるものがあるのです。

それにしても、毎日三回転、揚げ物を
しているとは思えない、調理台の清潔さ。
入れ替えの際に落ちた油など、綺麗に拭って、
汚れを残さない。

調理器具や厨房を大事にされるというのも、
一流の職人さんに、共通することのような
気がします。

油は、大きなドラム角缶で、時々、
継ぎ足されたり、油に揚げる力がなくなったら、
入れ替えしたり。

でも、全部取り替えはしないのです。
一度、漉した油を、最初に少し注ぐ。
全部新しい油にすると、素材である
魚が「痛がる」んですって。

お風呂と同じだね、と。
あたりのやわらかい油にするんですね。

油は2種類。
純正胡麻油。これはわかりますよね。
もう1つは、「サラダオイル」と。
ちょっと、びっくりしませんか?

サラダ油って、何だか、あまりにも
家庭用のお手頃な油、というイメージがあり、
まさかこんなお店で使っていらっしゃるなんて。

でも、サラダ油って、他の、菜種とか胡麻とか
ひまわりといった素材名ではなく、
「製法」なんですよね。

炒め物や揚げ物だけでなく、ドレッシングなど、
生で冷やして食べるのにも適している、というのが
名前の由来なのかな?
精製を念入りに行い、低温で凍らない(濁らない)
ように作り、軽く、淡白な風味が特長。

なんとなく、単材料の油よりも一段劣った
イメージを持ってしまうのは、間違った
認識なんですね。

「ほら、ああやって、控えで、ご主人に、
いかに気を遣わせずに揚げさせるか、というのが、
彼らの仕事なんだね。」
と、お隣の方から解説が。

私よりお若いか同じくらいの方が、下準備をして、
ちょっと、並べ方も考えつつ、カウンター近くに
素材を並べていく。

厨房って、基本的に、流れ作業というか、
チームワークの世界だものね。

同じ仕事をしても、本人の視点、問題意識によって、
吸収するものが、全く違ってくると、
ここからまた、新たに、若い職人さんが
巣立っていかれるのでしょう。

たった一度きりで、何が言えるかとも思いつつ、
皆さんが、あそこには行かないと!を口をそろえて
おっしゃる意味が、少しだけ、わかった気がしました。
B食店情報
・店名 : てんぷらみかわ 茅場町店(てんぷらみかわ かやばちょうてん)
・ジャンル : 和食-天ぷら
・住所 : 東京都中央区日本橋茅場町3ー4ー7
・TEL : 03-3664-9843
・営業時間 : 11:30?13:30 17:00?21:30 [祝] 12:00?13:30 17:00?21:00
・定休日 : 水曜・第2火曜
・最寄り駅 : 茅場町
・キーワード : 1976年開業、早乙女哲哉氏による江戸前天ぷらの名店
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