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2007年1月24日(水曜日)
[ 19:00 ] [ チュニジア ]
   
連載の最初は、チュニジア大使夫人の食卓にご案内いたしましょう。
この企画を始める以前から、チュニジア大使館にはよくお邪魔をして、食事をごちそうになっていました。
チュニジア料理というのはなんて美味しいのだろう、といつも感心していました。味付けはデリケートだし、見た目もたのしい。うまく食べるには、ちょっとしたワザが必要な料理もあったりします。チュニジア風春巻のブリックは中にはいっている半熟のたまごをこぼさないように食べるのがみそ。この食べ方でチュニジア人かどうかすぐにわかるらしい…こんなアトラクションまでついているのです。(写真は隣からワザを盗もうとしている私です)
世界には色々な料理があるんだなあ、と改めて気づきました。そしてそのときから色々な国々の料理を食べてみたい、そう考えるようになったのです。まあ、これがこの企画のはじまりなんです。
その国の歴史や風土、歴史そして自然を理解することが、料理をより楽しむことにつながると思うので、まずはチュニジアという国について少しご紹介しましょう。
チュニジアはアフリカ大陸の北端の中央にある地中海に面した国で、イタリアから真直ぐに南下した対岸にあります。地図を眺めると地中海文明圏にチュニジアが属していたことがよく理解できます。
地中海文明圏の中央にあったチュニジアの歴史は大変古く、紀元前9世紀にはフェニキア人の都市国家カルタゴとして栄えた国でした。そう、歴史の教科書で学んだあのカルタゴです。思い出しましたか。
その後146年にローマ帝国がカルタゴを征服し、7世紀にアラブ人が侵入し、1574年にオスマン帝国の属州になりました。1881年にはフランスの保護領になり、1956年にフランスから独立し共和国となり、昨年は建国50周年を迎え現在にいたっています。
この複雑な歴史がチュニジアの文化に多様な生彩と陰影を与え、料理の多彩な輝きにも、この歴史と文化が色濃く映し出されているといっていいでしょう。ローマ帝国が世界へ広めた豊穣なワイン、ベルベル人のクスクスはその代表といえます。
チュニジアの北部では、地中海の温暖な気候が豊穣な農産物を実らせてくれます。チュニジアではどんな料理にも使われるオリーブ油は、生産高は世界第4位で、機械を使わず、コールドプレスという昔ながらの製法で搾られています。野菜が香り高く美味しいことから、「チュニジア野菜」という呼び名がわざわざついているほどです。チュニジアの主食はGreen and Grain(野菜と穀物)といわれています。肉は付け合わせの感覚です。
外交官の方によると、海外からチュニジアに帰ると、家庭ではかならず野菜料理が振る舞われるのだそうです。チュニジアのお袋の味は野菜なのですね。最近、野菜が見た目には美しくなったものの、野菜本来の「味」というものがなくなってきている日本(消費者がそういう野菜を欲するからだと思いますが)とは、ひと味も二味も違った野菜が、チュニジアでは食べられそうです。
チュニジアに行って、是非チュニジア野菜を食べてみたいものですね。レストランで野菜料理を注文すると、きっと「通」と思われること間違いなし(?)。ほんとうかどうかはぜひ現地で試してみてください。

歴史の潮流がチュニジアに大きな骨骼を与えたとすれば、自然はさらにダイナミズムと多様性をその国土に植え付けました。北の地中海性の温暖な気候に対して、南には広大なサハラ砂漠が広がっています。
建築に目を向けると、地中海文明の拠点であったチュンジアには、人の目を惹きつける素晴らしい建物がたくさん残っています。
各地でローマ時代の遺跡を見ることができます。エル・ジェムの円形闘技場はローマ、ヴェローナに次ぐ世界第三の大きさです。色取りどりの大理石でつくったモザイクはローマ時代の生活をリアルに現代に伝えていて、イスラム文化のタイルとともにチュニジアの芸術の根幹を築いているといってもいいでしょう。
地中海の街並みの風景として最も有名なのは、ギリシャの島々の真っ白な住宅群でしょう。同じ地中海文明圏の一つであるチュニジアにも、同じ白い建物群は残っています。より高度な文明と建築技術を持っていたイスラム文化の影響をうけて、優雅なアーチと列柱が、その白亜の建築にエレガントさとエキゾチシズムを与えています。なかでも一際印象的なのは石のアーチに組み込まれた地中海の真っ青な海の色をイメージしたチュニジアブルーに塗られたドアです。
そのドアをくぐり建物の中に入ると、中央はパティオと呼ばれる中庭になっています。そこは家族の団らんの場であったり、夕食を楽しむ場であったりします。チュニジアの最近の流行はパティオでの結婚式だそうです。なにやらその風景が目に浮かんできて楽しそうですね。
時代が下って、フランス統治時代の名残りのアールデコ様式の建築も散見され、チュニスの街の風景に、ヨーロッパ風のテイストを与えています。
古代地中海文化、イスラム文化、そして近代ヨーロッパ文化が入りまじり、多様な彩りを楽しむことができる。そんな国がチュニジアなのです。


虹 次回は「いざ、キッチン拝見」です。お楽しみに!